46.目指したい会社になろう

突然ですが皆さん、やりたい事をやっている時と、そうでない時とではどちらが楽しいですか?そりゃあ、やりたい事をやっている時が楽しいに決まってますよね?私はこの事が仕事をする上で一番大切な事なのではないかと思っています。




“やりたい事”といっても、あまり幅広い意味でこの言葉を使ってしまうと、ある人は“皆で酒を飲む事”でまたある人は“半導体の研究に没頭する事”などととなってしまい、話がまとまらなくなってしまいますから、“自分たちが輝ける事”という表現にしたいと思います。中には、「別に輝けなくたっていいよ」と言う人もいるかもしれませんが、そのような人は自分が輝くことを諦めてしまっているだけで、本当に輝きたくないと思っているわけではないはずです。例えば、ゲームという趣味が社会的にあまり肯定的に評価されていなかったときに、ゲームが唯一の特技の人が「自分が輝ける場所なんて・・・」と思っていたとしても、eスポーツの台頭で、皆に羨望の眼差しで見られるようになれば、途端にその人は輝きを放つはずです。

 

それでは次に、自分たちが輝くために、今の会社をどんな会社にしたいと思いますか?貴方が経営者でなくとも、経営者になったつもりで考えてみてください。

 

“あらゆる物を簡単に安く提供し、消費者の利便性を究極まで追求する”会社ですか?“世界中のあらゆる駆動するものを少ないエネルギーで効率的に動かせるモーターを提供できる”会社ですか?“世界中の人々に合った洋服を、手ごろな価格でタイムリーに提供する”会社ですか?

 

人々から金をかすめ取るような悪いことを考えてはだめですよ。自分の利害のみを優先した考えに基づいて会社の方針を決めると、苦難が到来した時には、利害がぶつかってしまい皆で乗り切ることができません。やはり社会的に意味がある目標を掲げたほうが、やりがいもありますし、プライドを持って仕事に取り組むことができ、困難が訪れた時には皆で一つにまとまり乗切って、そしてより輝くことができるのだ思います。

 

さて、何を目指す会社にすべきかが決まったら次に大事なことは何でしょうか?答えは一つではないと思いますが、私は“目指すものを社員と共有する事”だと思っています。いくら素晴らしい企業像を考えたとしても、それに共感できるか否かは人によって異なります。ある人は“多くの人に安くてもおしゃれな服を届ける事”に使命感を感じる事ができるかもしれませんが、別のある人は“おしゃれに拘りの有る人を満足させるような服を作る事”に生きがいを感じるかもしれません。

 

価値観が違う人は、その会社で働いても苦痛に感じる事が多くなってしまいますから、考えが違うなと思ったら、その人は会社を去る方が幸せだと思います。ある程度の価値観を共有した人が集まって仕事をしたほうが楽しいですし、会社としての推進力も増すはずです。その為に、何を目指す会社にすべきかを決めたら、その方針を社員と共有して、残るべきか去るべきかを自分で決めてもらうべきだと思うわけです。

 

“自分が輝ける会社”などと耳障りの良い言葉を使ってみましたが、実際の仕事の世界は楽しい事や輝かしい事ばかりではありません。何しろ“輝ける会社”に到達するまでに幾多の困難を乗り越えなければならない訳ですから。その困難を乗り越えるためにも、ホンネの世界であることがとても大事だと感じています。勝負をかけているときには、

 

「これができるまでは寝ずに働け!」

 

という事ぐらいは、経営者やマネージャー/リーダーは言い切れるぐらいの気概があって良いと思います。“俺たち/私たちはそのぐらい価値のある事をやっているのだ”という誇りがあり、それが共有できていれば犠牲を払う事は受け入れられると思います。しかし、その思いが社長の独りよがりだとこれはただのパワハラになってしまう為に、価値観を共有できない人は去ってもらった方が良いという大前提があるのです。

 

逆に、最近は「残業するな」、「早く帰って読書などの時間にあてたほうが視野が開けて良い」などという方針を示している経営者も珍しくありませんが、私はそのような経営者の方が、その先に目指すべき企業像と「残業するな」等の方針が紐づいているとは考えられません。具体的にどんな効果をイメージしているのかが理解できません。

 

ホンネが共有されず、形式的な言葉が蔓延してしまうと、様々な事の解釈が個人にゆだねられてしまい、企業としての推進力が弱まると考えられます。これはかなり個人的な意見ですが、

 

“働き方改革”→“時短”→“RPA導入”

 

等といった取り組みは“形式的対応の極み”だと考えています。”働き方改革”の枠組み自身が形式的で、企業の競争力を増すものになっていないからか、取組自身もどうも本質的に企業の為になっていないような印象があるのです。もちろんRPAが価値を発揮する領域はあります。しかし、IT部門が肝いりで開始したRPAプロジェクトに対する経営層からの評価が総じて低い印象があります。もともと付加価値が高いわけではないが、長時間かかってしまうような作業を自動化するところからRPAの用途は始まっています。つまり付加価値が低い領域への投資ですから、投資対効果が出にくいわけです。その為、RPAのプロジェクトはその後、

 

“どうやってRPAを全社に広めるべきか”?

 

という事を考える必要が出てきます。回収する為の必然的な理屈なのですが、そもそも本質的な経営課題に対する投資ではなかったのではないかと思ってしまいます。

 

目指したい会社になるには、本質的な事により時間を割く必要があります。逆に言うと、形式的な事にはあまり時間を割くべきではないと考えます。形式的な事にも対応するには労力が削がれるからです。CO2削減やSDGs等、突然降ってわいてきたような言葉には気を付けたほうが良いです。通常、ビジネスというものは、ある課題が解決する事でメリットを受ける層が一定数あって、どこかの企業がイノベーションによって解決策を提供する事により成り立ち、その後多くの企業が参入する事で競争原理が働き価格が下がり、健全な市場が出来上がります。つまりNeedsが明確であることが重要です。

 

一方、例えばSDGsなどは、これを満たすとだれのNeedsが満たされるのですかね?恐らく、

 

「地球のNeedsが満たされるのだ」

 

という回答が返ってくる気がしますが、科学的な根拠を数値をもって説明できる人はいないと思います。恐らくどこかの誰かの利権につながっているとみるべきです。そもそも国連が採択している段階で怪しいのですが。。。いずれにせよ、誰のNeedsに応える物かが曖昧な国際的枠組みに労力を割くと、本業に割く時間が削がれますので、目指したい会社を本気で目指すのであれば、本質的なものでないものについては、したたかに手を抜くべきだと思います。

 

最後に、目指すべき会社になるために、方針を決め、社員と共有した後に必要となる本質的なものについて私見を述べさせて頂きます。

 

AIその他の科学の発展は日進月歩です。しかし、まだまだ人間の力では未来を見通すことはできないことが、今回のコロナでわかりました。その為、今後も我々が成長を続けていくために必要なことは、目の前で起こっていることに迅速に対応して前進していくことです。その為に我々が備えておくべき重要な事は以下だと思います。

 

・正当な企業目的/目標
・キャッシュ
・明文化されたビジネスプロセス(どこを変更すべきかに迅速に気づけるため)
・最新の技術に関する知識
・法に関する知識(競争は法に従って健全に行われる必要がある為)
・数学的能力(あらゆる論理的決断をする為に数学は有効)