3.緻密な計画の立て方       

1回目のブログでは、“幸せ”のサイクルを通して、信頼関係が強化されビジネスや自身が志す様々なエリアにおいて結果が出続けるというお話をしました。

しかしながら、結果が順調に出続けることによって、俗物的な欲に囚われてしまい、“幸せ”のサイクルから離れてしまうという事に陥りがちなので、自身の夢としては

「〇〇を通して、全人類が進歩発展をすることに貢献する第一人者となる」

というような崇高な夢を設定することが必要だという事を2回目のブログで述べました。



 

とは言っても、我々は厳しい経済環境下で競争を強いられるBusiness Men/Womenです。数値目標を立てることは避けて通れません。そこで今回は、崇高な夢を持ちながらも、ビジネス目標もクリアし、且つ日々の生活は活き活きと過ごせるための方法を、私の実体験に基づき共有させて頂きます。

 

そんな都合が良い事が可能なの?いよいよ、この著者あやしいな。。。 といった声が聞こえてきそうですが、大丈夫です。やるべきことは当たり前の事ばかりです。

先に答えを言ってしまうと、タイトルにある通り“緻密な計画を立てる”という事になります。

 

ここまでに出てきた主なキーワードを整理しますと

 

・崇高な目標:「○○を通して、全人類が進歩発展をすることに貢献する第一人者となる」

・ビジネス目標:例:売上1000億

・日々の活動:活き活きとしている

 

となりますが、これらを全て満たすには、この3つを紐づけることが必要です。それが“緻密な計画”という事になります。進め方としては以下のステップを踏みます。

 

1.“ビジネス目標”と“崇高な目標”の紐づけ

2.“ビジネス目標”を達成させるための計画の分解(中期→年間→週間→日次)

3.日々の心得の再確認

 

以下に順を追って説明してまいります。

 

1.“ビジネス目標”と“崇高な目標”の紐づけ

ここでは、自身が営むビジネス(事業)の目的を定義します。意識しなくてはいけないことは“誰を幸せにする為のビジネスか”です。貴方がペットフード業を営んでいるのであれば、

「ペットにとってより良い世界を提供し続けることによってペットとその飼い主/家族に笑顔をお届けする」

といった内容になります。

「緻密な計画」と銘打っている割にずいぶんざっくりしているなと感じましたか?でも、事業の目的はこのぐらいの緩さで充分です。要は誰に価値を届けるかがイメージできれば良いのです。あまり目的を細かく定義してしまうと、事業に対する視野を狭めてしまう事にもなりかねません。話は少し脇道にそれますが、事業の目的の定義の仕方によって成長速度が大きく差がついた事例についてご紹介いたします。これはHarvard Business Reviewに寄稿された経営学者の記事の抜粋です。

 

異なる事業目的と事業成長に関する事例:

米国にある2つの同規模のペットフード会社があり、2社は競合関係にありました。この2社が定めた事業目的は以下の通りでした。

A社:“ペットにより良いものを”

B社:“ペットにより良い世界を”

A社は、資本投下をペットフードに集中させ、一定以上のシェアは確保しましたが競合の激しいペットフード業界において、飛躍的な成長を遂げたというレベルまでは達しませんでした。

B社は、ペットの、家族の中での位置づけの高まりに注目し、ペット医療が家族にとって重要であると気づき、獣医関連企業を買収。結果、ペットを取り巻く大きな市場を取込みペット業界のリーダーに成長しました。

 

目的の定義によって結果に大きな違いが出ることもあるという面白い事例でしたので、読者の皆さんと共有させて頂きました。一芸に秀でることも重要ですが、その市場魅力的であれば当然競合も激しくなり、利益率は圧迫される傾向になりますので、価値をお届けするお客様の視線で必要な価値を再検証するような活動も定期的に実施することが大事という事でしょう。

 

話をビジネス目標に戻します。ビジネスの目的が決まればあとは具体的な数値目標と定性目標と期限を決めれば、“ビジネス目標”と“崇高な目標”の紐づけは完了です。

 

読者の方が、企業経営者でない場合は、自身が責任を持つ仕事において対象となるお客様(直接外部のお客様と接することのない職種の方は内部顧客をイメージしてください)と、自身の裁量を勘案して目的を定義してください。その上で数値目標と定性目標(スキルなど)を決めてください。“お客様”と“お客様に提供する価値”を意識して“崇高な目標”から乖離しないようにする訳です。

 

2.“ビジネス目標”を達成させるための計画の分解(中期→年間→週間→日次)

中期目標:

一般的には3年後に達成すべき目標を定義します。3年後にどういう状態になっていたいかをイメージして決めます。ここで、3年後のなりたい自分/自社をどう決めるかがわからない。。。という声を結構な頻度で耳にします。どうしたらいいかの答えは、自身がどうしたいかです。

 

「え?そんな乱暴で良いの?」

 

という声が聞こえてきそうですが、“いいんです!”(古い…)

企業においても個人においても、成長の原動力は“意志”です。「あそこに行きたい!」という強い思いがない限り、その地にたどり着くことはできないんですよね。

破竹の勢いて成長を続ける“ニトリ”の似鳥社長は29歳の時に、

 

“30年で100店舗、売上高1000億円、経常利益100億円”

 

という目標を立てましたが、実はこの数字、何の根拠もありませんでした。緻密な市場分析があったわけでもないです。「そうなりたい!」という思いだけで立てたものです。しかし、なんと驚いたことにその通りに実現してしまいました。(正確には31年かかったらしいですが)

 

ということで、皆さんのやりたいように目標設定をしてください。と言っても少しは参考になる情報があった方が助かるという方の為に一つの考え方をご紹介します。

 

まず、”10年で”とか”30年で”とかいう期間設定は、これはさすがに基準を示すのは難しいので皆さんで決めてください。貴方が20代なら似鳥社長のように30年後の目標を作るのもよいし、一方で貴方が70代なら10年後の方が良いかもしれません。(人生100年の時代ですから30年でも良いかもしれませんが)

 

次に、数値目標ですが、せっかく“崇高な夢”を掲げたのであれば、世の中に(少なくとも対象とする市場に)影響を及ぼすだけの目標を掲げた方が、やりがいがあるのではないでしょうか?数学者のクープマンのモデルによれば、26.1%のマーケットシェアを持つとその市場に対して影響力を行使できるということです。逆にそれ以下ですと、いてもいなくてもあまり市場に影響はないという事になりますので、26.1%以上のシェアを実現する数値目標を、10年なり30年の長期目標として立て、そこから逆算して3年後はいくらの売上が必要というのを決めるのが、比較的スムーズに目標を設定する方法だと思います。

 

読者の皆さんが、経営者ではない場合は将来のなりたい人物像を作って、そこから逆算して3年後までに何を身に付ける必要があるかを決めるのがよいでしょう。(会社員の場合、3年後の数値目標は自身でコントロールできない要素が多いために定性的目標に絞るという事です)

 

年間計画:

この回では詳しくは触れませんが、中期の数値目標を実現する為の計画を立てるには、何を軸に稼ぐかに関する方針決め(戦略策定)と、それを日々の活動に落としこむ為のビジネスプロセスの策定(施策)

が必須となります。これらに関する具体的な活動計画を年単位で区切ったものが年間計画になります。

読者の皆さんが、経営層の方でなければ、定性目標については、3年後までに身に付けるスキルの内、いくつを今年中にクリアするかを決めて、年間学習計画を立てます。数値目標については、営業マンがわかりやすいので、その前提で述べさせていただくと、まず年間予算を達成する為に、いつごろまでにどのお客様から幾らの売上を上げるかを設定します。数字の積み上げの際には以下のように層別すると整理しやすいです。

 

①放っておいても積みあがってくる馬なりの数字

②現在提案活動を進めている案件から期待できる数字

③ゼロから案件醸成するところから始めて創出する数字

 

そして、②③に対して活動計画を立てます。

B2Bの場合は各案件がどのプロセス上にあるかを整理して年間計画上にプロットします。以下に案件のプロセスの例を載せておきます。

②に属する案件が上記プロセスのどこにあるかを整理し、個別のお客様の検討期間の特性を加味して年間計画を立て、案件ごとの受注時期及び各プロセスの目標完了時期をプロットします。そこに主観的/客観的な勝率を加味することによって②のグループから得られる年間売り上げを想定し、①+②が予算に満たない場合は③の計画で補完することになります。

 

週間計画:

実際は年間計画と週間計画の間に四半期計画があります。四半期計画は年間計画と考え方は同じですので割愛します。四半期計画を維持する為に、今週は各プロセスをどこまで進める必要があり、その為にどんなアクションを取るべきかを記述したものが週間計画です。

週間計画の各アクションについては、作業として記述するのではなく、そのアクションによって達成すべき項目を記述します。

例えば、

“月曜日:A社に商品ABCのデモ実施”

という書き方は✖です。このアクションを通して何を達成したいかを記述します。例えば

“月曜日:A社に商品ABCのデモを通して山田部長から検討の合意を頂く”

という内容です。四半期計画上の翌週は提案書作成となっていた場合、その計画を維持する為に上記のアクションが必要なのです。上記の例の場合、山田部長の合意を得られない場合はアクションが実施されたことになりませんから、今週中にリターンマッチをするか、明確にお断りを頂いた場合は、別の案件創出をするといった内容が今週のアクションに加えらえることになります。あるいは、事前に山田部長の関心を聞くというアクションが抜けているという事に気付くかもしれません。

 

このように、“達成すべき”内容を明確にすることで、この1カ月ものすごく忙しかったけど、案件は何一つ前に進んでいなかった。。。。という様な状況を避けることができます。

 

日次計画:

日次計画は週間計画を日ごとに区切ったものです。EXCELに週間計画をまとめるとフィルター機能を使ってそのまま日次計画に転用できますので効率的です。このEXCELには仕事以外のプライベートの予定も全て登録していると、これさえ見ていれば全てが載っているという事になり、漏れ防止になり、集中力の維持向上にも寄与します。できればその日のアクションはAMでやる事とPMにやるもの程度の区分けをしておくと、目の前のアクションに集中することができます。

 

今述べた通り、日次計画を立てることのメリットは集中力を保つことができることです。ある作業を終えたときに、「さて次何しようかな」という時間はすごく無駄な時間です。

読者の方の中で、日曜の夕方になると憂鬱になる。いわゆるサザエさんシンドロームの方っていらっしゃいますか?私の実感では、

 

「ああ、月曜からまた仕事だ」

「いがしくなるな。いろいろやる事山積みだし」

 

という漠然とした不安がサザエさんシンドロームの原因の多くを占めているのではないかと考えています。月曜に会社に行ったらAMにやる事、PMにやることがはっきりしていると、漠然とした不安はほぼゼロになります。中には、いやな上司に会うのが嫌だというケースもあるかもしれませんが、ここまで述べたような年間計画→四半期計画→週間計画→日次計画が完璧に遂行できていれば、数字の結果は運不運もあるかもしれませんが、少なくともきっちりとプロセスにそってアクションが適切にとられていきますので、自然と周りの信頼度も増してきますから、上司に対しても毅然と会話ができるようになるはずです。

 

3.日々の心得の再確認

前項で述べた通り、日々の活動は、それぞれのタスクを次のステージに進めるための活動の連続です。つまり双方の細かい意思決定の連続です。意思決定をするという事は、利害を調整して前に話を進めることですから、衝突することも多々あります。ここで衝突した時は、自身の意志を押し通すことにのみ注力するのでもなく、御用聞きになるのでもなく、相手が何を期待しているかを理解して、それを解決するという“幸せ”のサイクルに従って行動すれば、活き活きと日々の仕事に勤しむことができます。そもそも相手も仕事として貴方と向き合っているわけですから、前に進めたいに決まっているわけです。

そして、この日々の活動は“崇高な夢”から連なって中期→年間→四半期→週間→日次と落し込まれてきたものです。このことを実感できると、日々の活動と自身の最終目標が一致した形となりあらゆるストレスから解放されます。

・・・少し、奇麗にまとめすぎましたね。あらゆるストレスから解放はされないかな。あらゆるストレスを跳ね返すパワーを得ることができるといった方が正しいです!!

 

次回からは、今回述べた計画を維持するためのあらゆる活動を通して身に付けられるもの、少なくとも私が身に付けることができたことを皆さんと共有させて頂くつもりです。