18.多国籍の社員 その付き合い方

前回のブログの最後でも触れましたが、最近はダイバーシティという言葉と共に、海外国籍の社員の採用について考える機会も増えてきたのではないかと思います。先日、優秀な海外の学生が日本の中小/中堅企業にインターンとして参加している様子を報じている番組を目にしました。ITの世界においてはAI等の需要は増える一方ですが、エンジニア不足は深刻です。トレンドだけでなく必要性の観点からも日本人以外の社員の採用を真剣に考える時代になっているのでしょう。



 

私自身は別に多国籍の社員のマネジメントのプロでも何でもないのですが、外資系企業に長く在籍していたので、様々な国の人と仕事をする機会に恵まれておりました。なのでその一部を共有させて頂き、それが読者の皆さんにとって何らかのヒントになればよいかなと思い、本日はこのテーマを扱う事にしました。

 

話に入る前に、私が働いていたある外資系企業における、私が属していたチーム編成についてご紹介します。

 

レポート先:インド現地法人CEO
上長   :中国系シンガポール人
部下   :日本人4名/イラン人1名/中国人1名
私はPlaying Managerでしたのでこれと同時に1件大型案件を扱っており、これについては10人程度の提案メンバーがおり、私以外は全て外国人でした。

 

ここで私が経験したことをご紹介していきたいと思います。
主に日本企業で長く働いている方からみると意外かもしれませんが、米国や、日本以外のアジアの法人における経営層はものすごくマイクロマネジメントをします。また、自身の出世の為には日本人よりもはるかに政治的な動きをします。上司に対してものすごく気を使いますし、ヨイショも普通にします。一方、現場の社員は自己の利益に固執しがちです。ミスを認めたがりません。
もちろん個人差はありますので、外国人全員がこのような人ばかりではありませんが、傾向としては今述べた通りです。その為に、上司が上ばかり見ている人で、部下が自身の給与の事しか考えていないといった特徴の強いチームの中で中間管理職をするとなると、かなりの胆力が必要になります。
数字に余裕があるときは、ある程度メンバーを泳がしてあげることもできるのですが、数字が悪くなるとマイクロマネジメントで1件1件の案件を追及されますので、私自身も部下をマイクロマネジメントせざるを得なくなります。

 

このような時の対策は、恐らく日本企業でも同じだと思いますが、状況を見える化するにつきます。自分の上司/上長とともに現在の問題と、それを打開する為に必要なアクションを一緒に考えるようにし、その進捗も共有するのです。つまり、上の人間を巻き込んでしまうわけですね。当事者にしてしまう。同時に、私は同じことをメンバーともします。そうすると縦のラインが同じ目標に向かうことができますので、ストレスは減ります。もちろん、「これをやります!」と宣言したことからは逃れられなくなりますので、楽ではないのですが、プロフェッショナルとしては目標から目を背けても意味がありません。力を集約する事の方が、楽をする事よりも重要だということが大前提です。

 

先ほど個人差はあるとお伝えしましたが、ここで国による特徴を少し皆さんに紹介しましょう。但し、ここで述べる各国の人々の特徴はあくまでも私の個人的印象によるものであることを予めお断りさせて頂きます。

 

それでは、まずはインド人から行きましょうか。私が前の会社で主に接していたディレクター以上の職位を持つインドの人たちは、どなたもそれなりの人格者であり、付き合いやすかったです。しかし一方、現場のメンバーになると、発した言葉に責任を持たないというか、あまり信用できない印象があります。とくに一度合意したことを平気で覆す傾向があり、話が前に進まないことが多かったです。
冒頭で、私個人の印象と申しましたが、インド人に関しては同様の印象を持っている人は多いです。マレーシアではほとんどの優秀な弁護士はインド人系といわれており、同時に最も信用できない奴らとも揶揄されています。インドには22もの言語があると言われており、言語が異なればそれだけ異なった文化も存在することになります。そしてそれらを繋ぐ共通言語が英語という状況です。それだけ多様性を持つ国で自分の意見を通すためには、話を覆してでも口八丁手八丁で主張を続ける必要性があり、そのことが、我々から見た彼らの特徴として表れているのかもしれません。そして、ひょっとするのその能力こそグローバル企業をまとめるためには求められているから、あらゆるグローバルIT企業のTopは、今インド人によって占められているのかもしれませんね。マイクロソフト、Googleそして最近はIBM。

 

次に、中国人と韓国人についての印象をお話ししましょう。どちらもお国に戻れば反日国ですが、日本で働いている人たちは当然親日家が多いです。そして、私の印象では日本にいる韓国人の方が中国人よりは、より真面目で日本人的な印象があります。中国人の方は、非常に優秀なのですが、どこか狡猾というか・・・あくまで自身の利益を最優先している印象が強いです。

 

実はこのことは歴史的背景に裏付けられている面もあります。中国は古代より宗族と呼ばれる父系の同族集団が、社会の基本的集団を構成していました。そして彼らは、現在の共産党も含むこれまでの王朝が、国民の為に何かをしてくれるなどとは思っておらず、宗族の維持発展が最も重要という考えに基づき、国の法律よりも宗族内の決まり事を優先してきたと言います。国民と政府はそのような関係でしたから、自分たちの宗族に利する事を通すためには賄賂は当たり前に使われてきました。そして宗族内に優秀な頭脳を持つ子供を授かると、一族の財産を投入し秀才に育て上げ、役人にさせるのです。そして我が宗族に利するあらゆる政策をとるよう期待する訳です。国の法律より宗族の法律を優先する彼らにとっては、そのような考えは当たり前であり、それが正義であり、そのためにあらゆる財産をつぎ込むわけです。
このような歴史的事実を学ぶと、昔知り合いの友人が中国人女性と結婚することになったとき、信じられないような大勢の親類縁者が押し寄せてきて、たかられたという話も納得できるようになります。その女性は一族を裕福にしてくれる男性を獲得する為に美容に投資したのかもしれませんね。
このような背景を持つ中国の方々は、我々から見ると自己中心的に見えますが、家族(宗族)に対しては自分を犠牲にして尽くす事も普通にあるそうです。

 

政府と国民がお互い、自らが属する集団の利益を最優先し、お互いを結びつける唯一の媒体が“金”という文化を持つ中国と、国民の安寧を祈ることを主たる務めとする天皇と、それを敬う国民という精神的なつながりにより一つにまとまる日本。この2つの国同士が理解しあう事は難しいのかもしれませんね。

 

話をビジネスの世界に戻しましょう。歴史的背景から国同士(特に中国)が理解しあうのは難しいと言いましたが、ビジネスをする上での個人間においては話は別です。少なくとも同じ会社に属する場合、大きな意味で利害は共有しているからです。
私の経験上、予算達成等の共通の利害ある場合は、米国人や中国人のような比較的利己的で合理主義の人たちの方が扱いやすいです。例えば日報を書けという命令を出すと、日本人よりも彼らの方が言う事を聞いたりします。それで評価してもらえるんだったらその方が良いという割り切りがあるのかもしれません。つまり、我々日本人が外国人の部下を持つケースにおいて、それほど文化的難しさは無いと思います。ある一つの事を守りさえすれば。。。

 

それは、“お互いにやるべきことを明確にする”という事です。

 

「え? それだけ?」

 

と思われましたか? はい。本当にそれだけです。

 

「今期は〇〇円の売り上げが目標だね。達成する為には、A, B, Cの3つの案件獲得が必須だね。この3つの案件を獲得する為に、1,2,3・・・10のアクションを取ることにしよう。」

 

という感じで、あとは適宜アクションがうまくいかなかったときに次は何をするかを決めて同じように繰り返すだけで彼らは一生懸命働いてくれました。敢えて言うならばコミュニケーションは丁寧にとるように努めていました。例えば日本語で会話をするとしたら、彼らが理解しやすいように短い文章に区切って話してあげるようにすると、

「樫村さんの日本語はなぜかどんどん頭に入ってきます!」

と感動して聞いてくれます。こっちも嬉しくなっちゃいます。(笑)

 

逆にやってはいけないことは、漠然とした指示を出すことです。

「〇〇円取ってこい!自分で考えろ!なんでできないんだ!」

ってなことをやると彼/彼女たちは混乱し始めます。実はこれは日本人の部下に対してもやってはいけない事なんですが・・・。日本人と外国人(特に米国人、中国人)の違いは、うまくいかない時に日本人はふさぎ込む傾向にありますが、外国人はめっちゃ抵抗してきます。
私はそうならないように努力していたのですが、ある日まで良好な関係にあった女性の外国人社員との関係が破綻するという苦い経験があります。

 

最初、彼女は私の部下ではありませんでしたが、ある日の辞令で私と彼女は上司―部下の関係になりました。この辞令は私の上司の意向によるものだったのですが、この上司はその外国人女性社員をまったく評価しておらず、2人の間にはコミュニケーションは殆どありませんでした。そして、恐らくは解雇を検討していたと推察されますが、私は彼女の働きぶりに関するいくつかの調査を命ぜられました。それを察知し不信感を覚えた彼女は、私を敵だと認識するようになったのです。
その後は、私から見た彼女のあらゆる仕事がBlack BOXになってしまいました。それだけでなく、指示を出しても聞かなくなってしまったのです。そもそも米国人/中国人は自分の非を認めることを極端に嫌う傾向にあるため、失敗を避けるために何もしなくなるわけです。指示を出しても、如何に私の指示が横暴かを非難することに終始して、彼女がアクションを取ることはありませんでした。ビジネスは停滞し、予算達成は遠のくばかりです。

 

上司と部下の不仲の間に挟まり、私は途方に暮れてしまいました。。。が、ある日あっけない形でそのことは解決します。彼女は私の上司よりさらに上の役員に取り入ることに成功し、パワハラを訴え、彼を解雇に追いやるというウルトラCをやってのけたのです。

 

さてここまでの記事の中で、私の経験談を皆さんにご紹介させて頂きましたが、これって必ずしも外国人に限って起こることではないとお感じになった方もいるのではないでしょうか?
最後のパワハラの例などは、吉本興業の会見じゃないですけど、日本で起こっても驚かないような社会になってきていると思いませんか?これらは概ね双方向のコミュニケーションができていなかったから起こったと言って良いと思います。最後のパワハラの例はその極みで、十分なコミュニケーションもなく解雇を画策した結果強烈なカウンターをくらってしまったという訳です。

 

なので、“お互いにやるべきことを明確にする”事さえ徹底すればうまくいくと申したわけです。逆に不明確にすると大変なことになるという例でしたが。。。

 

異なる国の人とコミュニケーションをとることは楽ではありません。お互いの母国語が異なる為、阿吽の呼吸を期待することはできません。だからこそ、やるべきことを整理して明確に分かりやすく伝えることが重要になるのだと思います。実はこのことは自分の頭を整理する事にも役立ちますので、結局は日本人の部下に対する指導に対しても良い効果をもたらします。さらに、もし読者の方で英語が苦手な方がいらっしゃるのであれば、是非チャレンジすることをお勧めします。ご自身の世界が広がることはもちろんですが、下手な英語を使って悔しい思いを沢山し、

「なんで俺が英語苦手だってわかってるくせにあんなに英語でまくしたてるんだよ。わかる訳ないじゃん」

というような経験を積むと、日本語がネイティブではない部下に対しても思いやりが持てるようになるからです。

 

あ、日本人上司と外国人部下の関係についてはお話ししましたが、同僚であるケースはお話ししていませんでしたね。まあ、個人差はありますが、彼/彼女たちはしたたかですので、ぼーっとしているとあなたのテリトリーから売上を奪うようなこともするかもしれません!

 

「どうしたらいいかですって?」

 

負けないように、切磋琢磨して実力負けしないようするしかありません!負けるな!日本人!!

 

という事で、次回は“負けない心”、“勝ちにこだわる心”を如何に育むかについて考えてみたいと思います。