20.モチベーション

前回のブログの最後でも触れた通り、本日はモチベーションについて考えていきたいと思います。



 

いきなりですが、モチベーションって必要なのでしょうか?そもそもモチベーションってなんですか?よく耳にする言葉ではありますが、個人的には漠然とこの言葉を乱用するのはよろしくないし、意味もないと思っています。何故なら、場合によってはモチベーションが無い方がマシだといったケースもあるからです。

 

「え?信じられないですって?」

 

そんなことはないでしょう。皆さんも経験したことがあると思います。周りにいませんか?無駄にモチベーションが高くてうざいやつ!いますよね~。何でうざいんでしょうか?その人・・・。様々なケースはあると思いますが、多くのケースはその人は自分のやりたい事だけを熱く語るタイプです。そんな人は、自分がやりたいことが周りにとって意味があるかどうかは、往々にして論理的に整理できていません。だから周りの人は共感できないんです。共感できないことを何度も熱く語られても・・・うざいですよね?

 

といことで、改めて“モチベーション”という言葉の意味するところを整理・定義してから議論を深める必要があると思います。“モチベーション”をそのまま日本語に訳すと“やる気”です。何に対する“やる気”なのでしょう?それはケースバイケースです。このブログは基本的にビジネスのシーンを話題の中心においていますので、今回は、

 

「会社の成長に貢献する事」 に対する“やる気”

 

これをモチベーションと呼ぶことにしましょう。次に、社員を以下の4つのタイプに大別してみましょう。

 

①モチベーションが高くて能力が高い社員
②モチベーションが高くて能力が低い社員
③モチベーションが低くて能力が高い社員
④モチベーションが低くて能力が低い社員

 

まず④については、あまり期待できませんからお辞めいただいた方が良いという事で本日の議論からは外させて頂きます。
勘違いしないでくださいね!“能力”というのはその会社にとって必要な能力を意味していますので、④の人は必ずしも世の中にとって不要な存在という意味ではありません。アーチストとしては大成功する人かもしれないわけです。

 

話を戻して①~③のタイプの人がどんな人なのかをイメージしてみましょう。

 

“①モチベーションが高くて能力が高い社員” は、会社の成長の為にどんどん新しいアイデアも出し、それを推進する能力もある人という感じでしょう。
“②モチベーションが高くて能力が低い社員” は、新しく適切なアイデアを創出することはできないかもしれませんが、適切な仕事をアサインすれば、一生懸命覚えて正しく遂行してくれでしょう。
“③モチベーションが低くて能力が高い社員” は、ピンポイントでその人の関心のあるタスクをアサインすれば高い成果をだすでしょう。しかし一方で、その人は周りの人を馬鹿にしたり、軋轢を生んでしまうかもしれません。短期的なタスクに参加してもらうような形が良いかもしれません。

 

このように眺めてみると、安定的に会社に貢献してくれそうなのは①と②に絞られそうです。やはり“モチベーション”は高い方が良いと言ってよさそうですね。客観的にみても経営層の人が“モチベーション”を重視することは間違っていないようです。ただここで、忘れてはいけない重要な事があります。それは、

 

①②の人も会社を選ぶ権利があるという事です。つまり、モチベーションの高い社員が自社を選んでくれる保証はないし、また既に在籍しているモチベーションの高い社員たちが在籍し続けてくれる保証もないという事です。

 

「ウチではモチベーションの高い若手にはどんどんチャンスを与えていて、成果も出している」 という素晴らしい事例を記事で目にすることがありますが、このような環境であれば彼/彼女たちは働き続けてくれるのでしょうか? 残念ながらそうではありません。

 

やる気がある人。モチベーションが高い人が会社を去るときとは、どういうときなのでしょうか?シンプルに言って“やる気を失ったとき”です。正確に言えば“その会社で働くモチベーションを失ったとき”です。

 

例えばこんな例があります。
とある会社に請われて社長に就任した方の話です。その方は、社員を巻き込み、新しい戦略を策定し、それに向かってビジネスを拡大していきました。当然社員は刺激され、特に戦略策定に参加した社員は非常に高いモチベーションで働いていました。順風満帆に思われたのですがある日、突然その社長は姿を消すことになったのです。実はその会社は大手グループ企業の子会社でした。そして、親会社の経営層の方針と、その新社長の方針には大きな乖離があり、結局その人は会社を去る以外に選択肢がなくなってしまったのです。もともとその子会社にいた多くの社員は、親会社の方針に不満を抱えていたのですが、そこに新風を巻き起こしてくれた新社長に刺激を受け、モチベーションを取り戻したのです。しかし、皆で練り上げた戦略・施策は水泡に帰すことになり、多くの社員は思いました。

 

「この会社じゃ俺たち/私たちのやりたいことをする事は無理だ」

 

と。そして多くの社員がその会社を去ることになりました。やりたい事ができない事が明らかになれば去るのは当然かもしれませんね。。。

 

「私はオーナー社長だからこのケースは当てはまらないし、やる気のある社員にはチャンスを与えているから大丈夫!」

 

そう思っている方いらっしゃいませんか?油断をしてはいけません。
経営者がVisionを語り、「同じバスに乗るか!?」と問いかけ、バスに乗った同士たちと出発してからは、もう止まることはできないと覚悟する必要があります。

 

「そこまでシビアに考える必要ある!?」

 

と感じますか?例えば、あなたが掲げるVisionや事業方針に共感して社員がついてきてくれて、その社員がVisionに沿うために勉強と努力を積み重ねてくれて、実績も残してくれたとします。一方で、経営者であるあなたは、そんな社員の頑張りもあって経営もある程度安定してきたので、しばらくは現在のお得意様との関係を維持する事ができれば良いと安定志向に移ったとします。そんなときに、あなたを信じてついてきたやる気に満ちた社員から

 

「社長!現在の市場はこのように動いています。我々はこの新規事業に進出すべきです!」

 

と言われたときにどんな反応をするでしょう。安定志向に移ってしまったあなたは、そんなリスクを取らなくても経営は安定している・・・と思うのではないでしょうか?そして、次のように答えるのではないでしょうか。

「今それをやるべきではない」

また、ある時に別のやる気に満ちた社員から

「社長!今はAIの時代です。AIを積極的に事業に取り入れることに着手しましょう!」

しかし、経営も安定して、今を満喫しているあなたは

「私は技術についてはよくわからん。調べて報告してくれないか」

 

というかもしれません。よく聞きますね。このやり取り。しかし、自らが危機感をもって新しいテクノロジーについても学び続ける姿勢が無く、社員からの提案を評価する姿勢でAIに関する企画案を聞いても、リスクばかりが目に付いて、採用することはありません。完璧なROIが約束されている企画案なんてないからです。自らが危機感と高い使命感を持って勉強し続けることをしない、安定志向の経営者は、社員のやる気を受け止めきれません。

 

この様なやり取りが何度か繰り返される中で、やる気に満ちた優秀な社員は、先ほど述べた例のように、

 

「この会社じゃ俺たち/私たちのやりたいことをする事は無理だ」

 

というあきらめの境地に達し、やがて会社を去る決心するようになります。もちろん、新規事業にやみくもに参入する事は避けるべきですし、慎重であるべきです。また、経営センスもあるような優秀な社員はいずれは独立を志しますので、ずっと社員でい続けてもらう事は不可能かもしれません。また、社員のモチベーションを維持するための方法論は世の中に沢山存在しますし、各々はきっと効果もあるのでしょう。しかし私は、究極的に言って社員のやる気を呼び込むのは経営者のやる気だと思っています。高い志と、使命感を持って挑戦し続けることは簡単な事ではないですし、リスクも伴いますから“勇気”が必要です。しかしながら、“勇気”をもってあらゆる手立てを講じ続けていると、不思議と周囲の人は応援してくれ、“何か”が起こります。わたくし個人もそのような経験をしていますし、著名な人の同様な経験談には枚挙にいとまがありません。

 

多くの経営者の方々は、高い志と使命感を持って会社を設立させたのだと思います。そのかつての自分を裏切って安定志向に入り、生き恥をさらすのか、ちょっときついけど“勇気”“勇気”で前進し続けるのかは自分次第ですが、私は後者が好きです。
“勇気”を維持することは大変であることを皆が知っているからこそ、“勇気”に満ちている人は魅力があるように見えるのかもしれませんし、そういう人は歩みを止めず、あらゆることを考えつくしますし、魅了された周囲の人は手を差し出します。理論的にも成功率はそちらの方が高くなるのです。だけど・・・なかなかできないんですよね~。それは“勇気”が足らないからです!(メビウスの輪状態 笑)

 

次回は、この“勇気”についてもう少し掘り下げてみたいと思います。