28.最強の営業(その5:まとめ+α)

これまで、4回に渡って“最強の営業”シリーズをお届けしてまいりました。本日は全体の振り返りと、それから、もし貴方が「悩める営業」であるならば、必殺技(?)となりうるノウハウをプレゼントしたいと思います!



 

その1~その2ではアカウントプランについて説明しました。ここでは、短期/中期の売上目標の設定と実現のためのプランを策定します。目標とプランが重要な理由は、この2つが無いと、ビジネスは成長しないからです。目標が予定通りに達成していない時、その理由はプラン通りのアクションが取れていないか、プランそのものが間違っているかです。プラン通りのアクションが取れていない場合はその理由を究明して、アクションを“巻く”ことが求められますし、プランが間違っている場合はプランを修正し、新たにアクションを取ることになります。しかしながら、プランそのものが無いと、アクションの柱が無い状態になってしまうためにダッチロールしてしまい、自分が理想に近づいているのか否かが分からなくなってしまい、結果成長しないという事になってしまうわけです。その為に、プランを立てること自身が重要という事になります。

 

しかしながら、プランの精度があまりに悪いと、修正だらけになってしまい、非効率になってしまうために、一定以上の精度を保つための方法を2回に渡って述べさせて頂きました。その中でも述べておりますが、最初から完璧なものができなくても焦らず、更新を重ねて完成形に近づく不断の努力が重要になります。

 

そして、その3では短期の案件獲得に向けての具体的なアクション、その4では中期的な案件獲得に向けての具体的なアクションの取り方ついて説明しました。これらのアクションの取り方を実行し、身に付けて頂くことにより、次にアカウントプランを策定するときには、より臨場感のある、つまりは精度の高いプランの策定が可能になります。

 

さあっ!後は実行あるのみ!と勇んで活動を開始した皆さんがつまずかないように、最後に必殺技をプレゼントしたいと思います。
これら一連の活動の中で重要なのは、情報収集であることはご理解いただけていると思います。そして、もっとも精度の高い情報はお客様への直接のヒアリングによって得られます。しかし、残念ながらお客様は質問にいつでも正直に答えてくれるとは限りません。付き合いの浅いお客様などは、答えてくれない事の方が多いくらいです。情報収集という最重要なアクションで皆さんが“つまずかないように”、ヒアリングのテクニックを“最強の営業”シリーズの結びとしてお届けし、皆さんか確実に目標達成に近づけることに力になれれば、嬉しい限りです。

 

では、いよいよヒアリングに関する最強のテクニックを伝授します!それは何だと思いますか?

 

それは“笑顔”です。

 

「は?何それ?それだけ?」

 

と思われましたか?もちろんそれだけでは無いのですが、“笑顔”が最重要であることは間違いありません。終始へらへら笑っている必要はありませんが、最初の名刺交換の時に、ニコっと笑うのです。そうするとどんなに“しかめっ面”の人であっても、ほとんどの人はつられて頬が緩みます。それだけで良いのです。

 

これについては、私自身の研究が十分でないために、論理的根拠をもって説明できないのですが、実体験上、最も効果のあるコミュニケーションツールは笑顔だと断言します。様々なお客様を前任の営業から引き継ぐときなど、

 

「気難しいお客様だから気を付けて」

 

と注意されたケースでも、そのお客様とのコミュニケーションで窮したケースは皆無です。もちろんそれ以外のヒアリングのテクニック等も駆使はしていますが、最初から会話がスムーズに始まるのです。

 

「どこが気難しい人なのかな?」

 

と思うくらいです。あって数分で起こるその違い。前任営業との違いは“笑顔”以外に見当たりません。
効果について詳しい根拠付けは、心理学に詳しい方に譲りますが、とにかく騙されたと思って試してみてください。いきなり自然な笑顔ができるとは限りませんので、鏡を見たりとか、身近な人から始めたりとか練習をしつつ、とにかく最初の挨拶の時はニコっと笑ってください。必ず効果がありますので。

 

さて、笑顔効果でお客様の口は緩んでいるはずですが、そこからダンマリではヒアリングは進みません。その後、どんどんお客様にしゃべって頂くためには3つのテクニックがあります。それは、

 

1.質問は具体的にする
2.お客様に評価していただく
3.得た情報は素早くお客様にフィードバックする

 

です。一つずつ説明していきますね。

 

1.質問は具体的にする
傾向として、漠然とした質問をしたときには、回答も漠然とした内容しか返ってきません。一方、具体的な質問をすると回答も具体的になります。例えば、

 

「お客様の課題は何ですか?」

 

と漠然とした質問をしても、

 

「さて、なんですかねぇ。人材ですかねぇ」

 

といった漠然とした回答しか返ってきません。しかし一方で、

 

「お客様の課題は、原価低減による価格競争力強化ですか?」

 

と具体的な質問を投げかけると、外れていたとしても、

 

「違います」

 

という明確な情報が得られます。具体的な質問を複数用意していけば、YesかNoが明確に返ってきますので事実に近づける訳です。しかし、これだけですと全てのパターンを用意しなくてはいけないので、2つ目のテクニックが必要になります。

 

2.お客様に評価していただく
これは、単に「〇〇ですか?」と聞くのではなく、自分の理解をお客様に伝えて、それを評価していただく形をとるという事です。例えば、

 

「有価証券報告書等を拝見し、私なりに勉強させて頂いた結果、お客様は現在原価低減による価格競争力強化に注力していると理解したのですが、私の理解あっていますでしょうか?」

 

という形で、相手をレビューアーと見立てて意見を求めると、

 

「よく勉強していますね。その通りです」とか「表向きはそういう事になってるのですが、実際は○○を重視しているんですよ」

 

などと気持ちよくしゃべってくれます。どうやら人は、質問を受けるよりも、意見を求められる方が口が滑らかになるようです。

 

さあ、お客様から貴重な情報を得ることができました。次にすべきことは?

 

3.得た情報は素早くお客様にフィードバック
お客様から貴重な情報を入手したら、なるべく早いタイミングでその情報を生かした“お返し”をしましょう。メールでも良いので、

 

「先日のインタビューで関心が強いと仰っていた〇〇に関連する情報を見つけましたので、ご案内します。詳しい内容に関心がおありであれば仰ってください。専門の者をお連れします。」

 

といった形で頂いた情報を生かした何かをお返しするのです。そうすると、お客様の中では

 

「こいつに情報提供すると、なんかいいことあるな」

 

と思ってくれたりします。そうなったらあとはこれを繰り返せばどんどん情報が取れます。また、お客様から情報をGiveされた後にこちらからもGiveすることにより、関係をフラットに戻す事ができますので、潜在的な遠慮がなくなり、気後れすることなく新たなヒアリングに臨めるという効果も期待できるわけです。

 

なお、ここではヒアリングに関する、すぐに実行可能なテクニックを中心にご紹介しておりますが、さらに体系的に学びたいという読者の方は”SPIN”で検索してみてください。世界的に実績のある手法ですので研修等を受けてみるのも良いでしょう。

 

営業の成績は会社の業績に直接影響しますので、実績を残せばスター扱いされますが、一方ではその逆もある訳で、ストレスの絶えない職種です。そんな厳しい環境下、皆さんが少しでも少ないストレスでお客様から有効な情報を得る手段として、本日お話しした手法を活用いただければ、それは私にとっても嬉しい事です。是非活用してみてください。