52.ストレス解消法

やや語りつくされた感はありますが、決してなくなることのない“ストレス”。皆さんはどのような解消法をお持ちでしょうか?一般的には、



 

・休養を取る(睡眠、リラックスする、ヨガなど)
・体を動かす
・仲の良い友達等に愚痴を話す
・酒を飲む
・趣味に没頭する
・旅行、部屋の模様掛け等、気分転換をする

 

と言ったものが挙げられます。ところで、ストレスの原因って何なのでしょうか?様々なケースがあるのだとは思いますが、一般的なケースを考えると、以下のGAPが大きければ大きいほどストレスを感じるのではないかと思います。

 

やりたい事/ありたい自分←―――GAP――――→現実の自分

 

さらに、このGAPが大きいと、周りからの評価も言葉や噂となって自分に返ってきますので、自身で感じるストレスに加えて外的な圧力によりさらにストレスが増すことになるのだと思います。

 

ところで、先に述べたようなストレス解消法は、多くの人は試していると思うのですが、果たしてその効果はありましたでしょうか?例えば、根詰めてきた時にジョギングなどで汗をかくと、心が軽くなったりしますよね。なかなか悩みながら走ることは難しいですから、心が解き放たれるのかもしれませんね。お酒を飲みながら好きな動画を観たりするのも良いですよね。嫌なことが忘れられます。
ここで、便宜上「ストレスと感じること」を“負の思い”と表現し、ジョギングその他のストレス解消法として行う「楽しい事をしているときの心」を“正の思い”と表現する事にします。丁度以下の図のように“負の思い”と同等かそれ以上の“正の思い”を経験した時に、負と正が相殺されて、ストレスが解消されたように感じるのでしょう。

では、このような“正の思い”を経験させてくれる楽しい事を頻繁に実施すればストレスから解放されるのでしょうか?残念ながらそうではないですよね?読者の皆さんも気付いていると思います。今述べた、“負の思い”と”正の思い“は、各々は完全に独立しています。一方で先に述べたストレスの原因は、”やりたい事/ありたい自分“と”現実の自分“の間にあるGAPです。”正の思い“を引き出す様々な経験をしたところで、根本原因は消えませんから、時間がたつとまたムクムクと”負の思い“の存在感が増してきてストレスを感じてしまいます。

 

私は心理学者でもありませんし、セラピストでもありませんから「ストレスの正しい解消法はこれです!」と言ったりすると怒られてしまうでしょう。しかし私は、昔から望みばかり大きくて、その傾向が年を重ねても変わらないという特異な性質の持ち主(笑)であるが故に、”やりたい事/ありたい自分“と”現実の自分“の間にあるGAPは人より多きくなりがちな状況にあるのですが、自分の力でストレスを克服してきたという自負がありますので、この経験に基づいたお話をさせて頂きたいと思います。

 

ストレスに打ち克つために、私が重要だと考えていることは以下の3点です。

 

①現実を受け入れる
②根本原因を解決する
③勇気を出す!

 

順にお話をさせて頂きます。

 

①現実を受け入れる
実は私が大学生の時は、毎年春休みには海外で一人旅をしていました。いわゆるバックパッカーと言うやつです。往復の格安航空チケットだけを買ってあとは宿もレジャーも現地で調達しました。「地球の歩き方」で下調べをして計画を立てていくのですが、全然計画通りに進みません。

 

大学1年生の初めての海外旅行はタイでした。深夜に現地に到着するので空港で一夜を過ごし、市バスで移動し、フラワンポーン駅という中央駅に着いてから南に電車で移動するというのが当初の計画だったのですが、飛行機の中で隣に座っていた日本語ペラペラのバングラデシュ人と意気投合してしまい、空港に着いたら、そこで一夜を過ごす予定だったのですが、「安くていい宿があるから紹介するよ」とタクシー代まで奢ってもらい、そのホテルに泊まり、翌朝は一緒に朝食を食べました。そこで私は、「いかんいかん。一人旅すると決めたのに」と思い立って、食事の後彼に別れを告げ、一人歩きだしました。

 

「いざ、フラワポーン駅へ!」

 

と思ったのですが、その場所までの全てはそのバングラデシュ人任せだったので、自分がどこにいるかわかりません!そこで、たむろしているトゥクトゥクという安いタクシーのような乗り物のドライバーのところに行き、必死でタイ語で書いた”フラワポーン駅”という字を見せ、(よほど字が下手だったのでしょう)失笑を買いつつもなんとか駅に着く事ができ、やっと旅のスタートポイントに着く事ができたのでした。私の一人旅は終始そのような事の連続なのですが、その経験の全てが新鮮で、且つその失敗を次の旅に活かすこともできたので、私はこのような失敗も、旅の楽しみとしてとらえるようになりましました。

 

話がだいぶそれたようですが、私が言いたいのは、自分にとって都合の悪いことが起こったとしても、悲観するのではなく、

 

「世の中、うまくいく方が少ないんだ。こんな事故は当たり前の事なんだ」

 

と受け入れればよいという事です。「よくある事だ」と受け入れるだけで、悲観せずに、「じゃあ次に何すればよいのか」と切り替える事ができるようになります。

 

②根本原因を解決する
前項で一人旅の例を出して“現実を受け入れる”話を致しましたが、これが仕事のシーンとなると結構タフな状況になる可能性がある事は否定しません。私の場合のもっとも辛かった経験は、エンジニアから営業に鞍替えして間もない時に、慣れない営業で成績が上がらず、上司からの評価も散々で、後輩に対しても後塵を拝し、さらにお客様とのトラブルが深刻な状況になり、お客様へのレポートを書くのも任せられないという事で本部長にマンツーマンの指導を受けてたときの経験でした。最初は私が書いた下書きをレビューしてもらっていたのですが、

 

「お前に書かせてもろくな文章ができないから、俺がこれから言う事をそのまま書け!」
「お前は、ファイルをいつ無くすかわからんからすぐに保存しろ!」
「“保存”機能ぐらいアイコン化しておけ!」

 

とまで言われて、一生の内でも最も自信を喪失した時期だったかもしれません。それまでは自分はそこそこイケているという根拠のない自信があったのですが、それは木端微塵に吹き飛んでしまいました。これ以上のどん底はないくらいに私の心は落ち込んでいたのですが、落ち込んでいても仕方がないのである時私はこう思うようにしました。

 

「俺は、自分で思っているよりずっと馬鹿だったのだ。だから一からやり直そう。できることから積み上げよう」

 

変にプライドを持つと、本部長からの扱いに耐えられなくなるので、自分を馬鹿だと思う事で心を楽にしたかったのかもしれません。そしてそう思った後の最初の私の行動は“保存”機能をアイコン化する事でした。しかしこれが運命の下降線から上昇線への分岐点になるとは想像もしていませんでした。

 

2回目のトラブル報告書の本部長レビューの時も前回同様、本部長の言葉を一言一句タイプしていたのですが、そこでいつものように、

 

「保存しろ!」

 

と言われたので、用意したアイコンをクリックしたときに本部長が小さな言葉でつぶやきました。

 

「ふーん。こいつ一応言われたことはやるんだな・・・」

 

他の人が聞いてもなんとも思わない一言かもしれませんが、その日まで連日のように罵声を浴びていた私にとって、この一言は非常に嬉しい一言でした。それがあまりにも嬉しかったので、本部長のいう事は一言も聞き漏らさないようにして、全ての次の行動に反映するようしていくと、徐々に反応が変わっていき、以前はトラブルレポートに関しては全ての事について事前チェックをされていましたが、そのうちポイント以外は任せられるようになり、少しずつ信頼されていることを感じる事ができました。最終的には私の営業成績も順調に推移し、表彰されるまでになり、その本部長とは、私が最も親しい上長の1人と言えるまでの仲になりました。

 

当初は“そこそこイケている”と思っていた自分は“馬鹿なのだ”という、このGAPは非常に大きくストレスも最高潮に達していたように記憶していますが、一つずつそのGAPを埋める活動をして、最終的に認めてもらったときにはGAPが埋まり、ストレスはきれいになくなっていました。

 

体を動かしたり、酒を飲んだりといったストレス解消法は、このGAPが解消するまでの日々を過ごすためには多少の効果はありましたが、この解消法だけではGAPを埋めてはくれません。根本原因を解決しないとGAPは埋まらないのです。なので私は仕事のストレスは仕事で解決するしかないと思っています。

 

③勇気を出す!
さて、ここまでは主に、“負のストレス”を中心に語ってまいりました。起こっていることを受け入れて、向き合って解決することによってストレスを元から断つというアプローチです。これに加えて、ストレスには“正のストレス”とでもいうべき前向きなストレスもあります。それは起業だったり、昇進だったりといった、何か前向きなチャレンジをするときに感じるストレスです。これは“不安”と言う言葉に置き換えても良いかもしれません。これまで自分が経験したことが無いようなことに挑戦したり、より高い理想を追求しようとしたときには、目の前には高いハードルがあり、失敗する可能性もある訳ですから、当然強いストレスを感じます。実際に失敗する人もいますし、ストレスに負けてチャレンジを辞めてしまう人もいます。このストレスに打ち克つにはどうしたらよいのでしょうか?

 

答えは“勇気を持つ”ことです。これ以外にはありません。

 

これは私の経験からも言える事ですが、私の座右の書でもある「運命を拓く」の著者である中村天風先生もそのご著書の中で強く述べている事でもあり、さらには私が最も尊敬している、京セラの創業者であり、NTTに伍していける初めての民間通信会社であるKDDIを立上げ、経営破綻したJALを見事に復活させた稲盛和夫さんも仰っている事です。“勇気”をもって前進すれば必ず突破口が開きます。ただし、これにはたった一つの条件があります。

 

それは、あなたがしているその挑戦/チャレンジが“正しい”ことである事です。正しい事とは、世の中の役に立つことという意味です。世の中の自分以外の人たちが一人でも多く“幸せ”を感じる何かを生むための進歩発展に貢献する事という意味です。古代と比較して現代は確実に良くなっています。科学技術の進歩によって人々の暮らしは格段に良くなっていますし、法律を整理したことにより凶悪犯罪も減少しています。人間は自然を壊す悪い存在だと卑下する人がいますが、そんなことはありません。中には密猟をして私腹を肥やそうとする悪い奴らもいますが、多くの人は自然を大事にしようと思っていますし、その為に人事を尽くそうとしています。

 

地球上にこれだけ多くの生物が存在するにもかかわらず、人間にのみ特別な力が与えられているのは何らかの使命が与えられているとしか考えられません。それは地球上の生きとし生ける物がより“幸せ”になれるために進歩発展することに貢献する事だと思います。なので、この方向で挑戦/チャレンジをする人には、何らかの力が作用してうまくいくのだと思います。うまくいかない時は、よこしまな考えがよぎったときか、勇気を失って挑戦を止めてしまった時です。

 

ちょっと最後はスピリチュアルな感じになってしまいましたが、理屈は通っていると思いますし、私の経験上は証明されていますので、これからも証明し続けようと強く思っています。