57.Apple/Googleを終わらせるのは独禁法か?新たなテクノロジーか?

突然ですが、皆さんは1日当たりどれくらいの時間をスマホゲームにかけていますか?実は最近、このスマホゲームをめぐって世間を賑わせているニュースがあります。それは、



 

“アップルと「フォートナイト」の全面戦争”

 

です。結構ネットの記事でも注目されているのでご存知の方も多いと思いますが、この記事の内容について簡単に説明させて頂きます。

 

「Fortnite(フォートナイト)」とは、米Epic Games社が提供する人気ゲームのタイトルです。このゲームの世界の総プレイヤー人口は、2020年5月の段階で3億5000万人だそうです。そして、このタイトルが8月14日に「App Store」と「Google play」から削除されたのです。理由は「利用ガイドライン違反」だということです。

 

AppleはApp Storeの利用企業に対して、利用料としてアプリ販売価格の30%を課しています。Google Playも同様に30%の利用料を徴収しています。これを不服としたEpic Games社は、ユーザーがゲーム内で追加のアイテムを購入するときにApp Storeをかいくぐり、直接且つ割安でEpic Gamesから購入できる仕組みを用意し、これに対してAppleとGoogleは「App Store」と「Google play」から削除するといった措置を取ったわけです。

 

一方、Epic Gamesは“販売価格の30%をAppleに利用料として支払う”と言うルールが一方的であるということで独占禁止法に抵触していると訴訟を起こしています。Android端末の場合はGoogle Playを介さずにアプリを入手する方法は(わずかながらではありますが)あるのですが、iPhoneの場合はApp Store以外にアプリの売買はできませんから、Epic Gamesの気持ちは理解できなくもありません。

 

もともとゲームソフトはファミコン、PlayStationやXboxといったゲーム機上で稼働していました。ユーザーが楽しむのはゲームソフトなのに、そのゲームを楽しむためにユーザーは、高額なゲーム機に投資しなくてはならない。その様な背景から、各ゲームソフト会社の人たちは、本来は自分たちに向けられるべきユーザーの投資がゲーム機メーカーによって搾取されている。しかも新モデルの発売に合わせてゲームソフトの開発を要求されたりして、マーケティング活動も自身の判断でできない。。。といった思いがあり、ゲーム機メーカーから切り離された世界で勝負したいと強く思うようになり、ネットに流れていきました。このような経緯を鑑みると、力のあるゲームソフト会社が30%の利用料という枷に対してアレルギー反応を見せる事は理解できます。

 

しかし、だからと言ってEpic Gamesがとった行動は妥当なのでしょうか?ルール破りは見つからないと高を括っていたのでしょうか?私が目にした記事の記者の分析によれば、Epic Gamesは「App Store」/「Google play」から削除されることは覚悟の上で勝負に出たのだろうとの事です。しかしこの勝負に勝機はあるのでしょうか?

 

HIS Technologyが2017年時点で推定した2020年のスマホユーザー数は60億人を超えます。一方、「Fortnite(フォートナイト)」の総プレイヤー数は3億5000万人。約6%程度ですからチキンレースをするのであれば勝ち目はありません。とは言え、「Fortnite(フォートナイト)」というタイトルは有名なので注目を集める事はできるということで、記者の分析によれば、Appleにゆさぶりをかけて30%と言う利用料の条件を緩和する事を狙っているのだろうという事でした。

 

私がこの記事を読んで改めて感じたことは、スマホと言うプラットフォームを抑えているAppleとGoogleの圧倒的な強さでした。世界中の人が使っているスマホというプラットフォームを置き換える物は今後生まれてくるのでしょうか?本日は、このことについての可能性を考えてみたいと思います。

 

スマホの強さは何といっても誰もが毎日使うモノであるという事だと思います。ゲームを使う人はゲーム好きな人ですから、それだけでマーケットは絞られてしまいますが、スマホには電話機能、ブラウザー機能、カメラ機能及びそれらスマホ本体の機能を活用したあらゆるアプリが提供する機能を提供する為に、リーチできるマーケットが巨大です。つまり、様々な人が毎日使う機能が凝縮されていることがスマホの強みと言えると思います。そこで、“スマホの次”を考える為に、「毎日使うモノで、手元にあると便利なモノ」というものを上げてみることにしました。そして私なりの結論に達しました。

 

「スマホでできないものが思いつかない!」

 

これは私の想像力や知識が十分でないという事もあるのでしょうが、「毎日使うモノで、手元にあると便利なモノ」という視点で現在のスマホを超えるものを考え出すことはかなり難しいと感じました。

 

という事は、独禁法の適用による解体等が無い限り、Apple及びGoogleのスマホの覇権は永遠に続くのでしょうか?その結論だとあまりにつまらないので次のような角度から考えてみる事にしました。

 

“今のスマホに足らないもの。機能を拡張することによって大きな利便性をユーザーが享受できるモノ”

 

私が思いついたことはスクリーンの小ささです。携帯性を重視すると、スクリーンはある一定以下の大きさにせざるを得ません。これに対して不便さを感じている人は少ないかもしれませんが、私の場合最近老眼が進んできているせいか(汗)、小さいスクリーンに閉口することが増えてきています。ということで私が大いに可能性を感じるエリアはAR/VR機能を含めたHMD(Head Mounted Display)もしくはGoogle Glass的なものです。

 

通常のスマホですと、一度に閲覧できる情報の量はスクリーンの大きさに制限されますが、VRの世界では一気のその制限が取っ払われ360°の空間を使えます。仮想空間に閲覧する為の情報とメモをする空間が共存し、仮想キーボードを通してその空間内の操作ができたとしたら、満員電車の中でもまるで広い書斎で複数の書籍とノートを手に作業をする事と同じことができるようになります。よくSF映画の世界で仮想キーボードを操作するようなシーンが見られますが、なかなか現実の世界に出てきませんね。でもVRを幻肢痛治療に応用した事例を目にしたときから、いずれこの様な世界がやってくると感じるようになりました。その事例を少しご紹介します。

 

幻肢痛とは、事故や病気で手足を切断した後、既に失ってしまっているはずの手足から強烈な痛みを感じるという症状です。このような症状が起こる理由は以下のメカニズムによるものだそうです。

 

「腕を動かしたいときは、脳の運動機能をつかさどる部分が腕の神経に指令を出し、腕の筋肉を収縮させて動かす。ところが、腕の神経を失った場合、脳から出した指令が筋肉に届かず、フィードバックも来なくなるため、脳が異常事態と認識し痛みを起こす」

 

この脳の誤作動を防ぐためにVR用いたリハビリテーション機器が開発されました。
まず、健康な肩・肘・手首・5本の指の動きをモーションキャプチャで検知し、リアルタイムに左右反転させた形で、幻肢側(失った手足側)に再現し視覚情報をつくる。さらに、患者にとってイメージでしかなかった幻肢をVRで動かしてみることができる。その結果、幻肢を動かすことで健康な側も動くため、両手を動かしているように見える。この『あたかも幻肢を自分の意思で動かしていると感じること』によって、両手の動きを視覚化することが脳への情報伝達となり、神経の再構築へとつながり脳が異常を感じないようにし、痛みを緩和させるという仕組みです。
つまり、これまでは脳が無いはずの手足に指令を出すと、その指令は途中で途絶え、当然動いたときに感じるであろう5感からのフィードバックが無く脳がエラーを起こす結果、幻肢痛が起こっていましたが、これを精巧なVRを通してあたかも腕があるかのように見せることによって、視覚的フィードバックを脳に返し、脳がエラーを出す可能性を減少させる効果があるという事です。

 

私は、メモを書いたり、図を描くと言った行為は脳を補完する行為だと思っています、そしてこの行為が紙やPC/スマホ上で行われている限りは物理的制限から逃れられません。紙もスマホも物理的な大きさを持つからです。こらがVRのように3次元空間に展開できた瞬間にこの制限から解き放たれる事ができて、前述の幻肢痛対策のように脳との相互補完的関係、いやそれ以上に脳の機能を最大限活用する機会を得られるようになると思います。個人的には先ほど述べた”満員電車広々書斎”は5Gの普及期機と同じタイミング(2024~2025年ごろと言われている)では実現性が増すと思っています。しかしこれがスマホの機能拡張の形で展開されるとAppleとGoogleの覇権は変わりません。

 

もし、比較的短い期間でApple/Googleのスマホ覇権を打開するとするならば、スマホではなくVR専用機を開発する事だと思います。先ほど挙げた“満員電車広々書斎”でもよいですし、あるいはゲームでも良いです。独自の専用機を開発して、独自の強烈なアプリでその利便性をユーザーに体験してもらいます。するとその体験の中で、他のゲーマーと会話できるためにチャット機能も欲しいね。。。ということでチャット機能を追加する。そして一つ一つ機能を拡張していくうちに、実はスマホの機能を一つ一つはぎ取っていくことになり、スマホの機能を丸々カバーしている新しいデバイスを作る・・・という戦法です。これは、固有の市場を発掘し、そのなかで技術の発展を繰り返し、既存の市場を飲み込むというクレイトン・クリステンセンの著書「イノベーションのジレンマ」の考え方を応用したものです。

 

実は私は1週間前にはブログ記事の下書きを終えるようにしているのですが、この記事の下書きから本日のリリースの間にAppleがApple Glassを発表しましたね。この覇権者を打ち破るには相当なVisionを持たないと難しいことを改めて感じさせられました。

 

もちろん、独自の専用機を開発するには投資が必要ですから、リスクも伴います。それにこの案はネットと不可分ですからMVNO等並行して検討すべきことは山のようにあるでしょう。そのリスクを負ってでも前に進む推進力の源泉は、“世の中にとって必要だから”強い思いだと思います。逆にそのような強い使命感のようなものが無いと世の中の構造を変える事は出来ないでしょう。実はTech-Dabの今のソリューションからは想像もつかないと思いますが、“満員電車広々書斎”的な概念をもって進めております。